薬剤師の求人を見ていると、
「残業少なめ」
「月平均残業5時間」
という言葉をよく見かけます。
月5時間なら、1日あたりにするとかなり少ない。
「ここなら定時で帰れそう」
と思いますよね。
私も求人を見るなら、残業時間が少ない方には当然目がいきます。
でも、ふと気になりました。
その5時間って、何をして残っている5時間なんだろう。
薬歴が終わらないのか。
閉局間際に患者さんが来るのか。
在宅の報告書なのか。
棚卸しなのか。
管理薬剤師だけ残っているのか。
同じ「月5時間」でも、理由によって働き方はかなり違いそうです。
そこで今回は、
薬剤師求人の残業時間は、どう見ればいいのか。
調べてみました。
まず、「残業月5時間」という数字自体は嘘なの?
最初にここを整理しておきます。
例えばハローワークの求人票では、時間外労働が予定される場合、月平均の時間外労働時間を記載する仕組みになっています。(ハローワークインターネットサービス「労働法等に関する解説」)
なので、
「残業月平均5時間」という数字自体を、最初から疑ってかかる必要はありません。
問題は別です。
「月平均5時間」と分かっても、
- どの店舗の数字なのか
- 誰を対象にした平均なのか
- 繁忙期も含まれているのか
- 管理薬剤師も一般薬剤師も同じなのか
- 毎日15分ずつなのか、月末にまとめて5時間なのか
までは、その数字だけでは分かりません。
つまり、
平均残業時間は「残業の量」は教えてくれるけれど、「残業の正体」までは教えてくれない。
ここが今回のポイントです。
そもそも、薬局では何が残業になりやすい?
調剤薬局で考えると、閉局時間になった瞬間にすべての仕事が消えるわけではありません。
例えば、
薬歴
外来が続けば、投薬は終わっても薬歴が残ることがあります。
特に閉局間際まで患者さんが続けば、
患者対応は終わった。でも記録が終わっていない。
という状態になります。
同じ月5時間でも、毎日少しずつ薬歴が積み残される職場なのか、たまたま忙しい日に発生するだけなのかでは意味が違います。
閉局間際の患者対応
18時閉局だからといって、18時ちょうどに仕事が全部終わるとは限りません。
17時58分に処方箋を受け付ければ、
調剤。
監査。
投薬。
会計。
薬歴。
場合によっては疑義照会まであります。
これは仕事内容上、ある程度避けにくい残業です。
ただし、
毎日のように起きているのか、たまに起きるだけなのか。
ここは確認したいところです。
在宅の報告書・記録
在宅がある薬局なら、
患者宅や施設へ行って終わりではありません。
記録や報告。
医師・ケアマネジャーなどへの情報提供。
次回訪問の準備。
残薬の整理。
こうした仕事もあります。
外来と在宅を同じ薬剤師が担当している職場では、
外来が落ち着いてから在宅関連業務をする
という構造になっていないかは気になります。
往診同行
往診同行がある場合も同じです。
予定通り終わればいいのですが、診療時間は必ずしも薬局側の都合通りには進みません。
往診から戻って、
処方内容を確認して、
薬を準備して、
その後に通常業務。
となれば、その日の残業が発生しやすくなる可能性があります。
「往診同行あり」だけでなく、
往診の日はどういう勤務になるのか
まで聞いておきたいところです。
棚卸し
普段はほぼ定時。
でも棚卸しの日だけ大きく残る。
これもあり得ます。
例えば毎月の残業が、
0時間
0時間
0時間
10時間
のような働き方なら、
「平均すると少ない」
と言えてしまいます。
平均値だけでは、こういう偏りは見えません。
会議・研修
会社によっては、営業時間外に会議や研修を行うこともあります。
ここで一つ重要なのが、
会社から参加を義務づけられた研修や教育訓練は、労働時間に当たり得る
ということです。
厚生労働省は、使用者の指揮命令下にある時間を労働時間とし、業務上参加を義務づけられた研修・教育訓練や、指示された業務上必要な学習なども労働時間として扱う必要があるとしています。(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
なので求人を見るなら、
「研修充実」
だけでなく、
「研修はいつやるんだろう?」
も意外と大事です。
開局前の準備・閉局後の片付け
これも似ています。
厚生労働省は、使用者の指示によって行う業務上必要な準備や、業務終了後の片付け・清掃なども、条件によって労働時間に当たるとしています。
例えば9時開局なら、
8時50分に来て、
PCを立ち上げる。
レジを準備する。
調剤室を整える。
それが毎日のように必要なら、
求人票の「9時~18時」だけでは実際の拘束時間は分かりません。
これはかなり見落としやすいと思います。
管理薬剤師だけに発生する仕事
もう一つ気になるのが、役職による違いです。
一般薬剤師は定時で帰れる。
でも管理薬剤師は、
在庫。
本部との連絡。
行政関係。
スタッフ対応。
報告。
店舗運営。
などが残る。
こんな職場なら、
「薬剤師の平均残業5時間」だけでは、自分が管理薬剤師になったときの働き方は分かりません。
求人で管理薬剤師候補になっているなら、
全体平均ではなく、
「管理薬剤師だとどのくらいですか?」
と分けて聞いた方がよさそうです。
「平均5時間」なら、1日15分くらいだから大丈夫?
月20日勤務として考えると、
月5時間なら1日平均15分程度です。
数字だけなら、かなり少なく見えます。
ただ、
ここでも平均には注意が必要です。
例えば、
職場A
毎日ほぼ15分残る。
職場B
普段は定時だけれど、月末に5時間残る。
職場C
普段は定時だけれど、在宅担当の日だけ1時間ずつ残る。
職場D
A店舗はほぼ0時間、B店舗は毎月10時間。会社全体では平均5時間。
全部、
「平均5時間」
になり得ます。
でも、働き方は全然違います。
だから求人票に平均残業時間が書かれていたら、
次に聞きたいのは、
「その平均は、どんな働き方を平均した数字ですか?」
です。
私なら「何時間?」より先に「なぜ残る?」を聞く
今回調べていて、ここが一番重要だと思いました。
求人票では、
「残業月平均5時間」
と数字で書かれています。
だからこちらも、
「5時間なら少ない」
「20時間なら多い」
と数字で判断したくなります。
でも、本当に知りたいのは、
残業時間そのものより、仕事が勤務時間内に終わらない理由
なんですよね。
例えば、
「主に閉局間際の患者対応です」
なら、仕事内容上ある程度イメージできます。
一方で、
「毎日薬歴が残ります」
なら、人員配置や業務量についてもう少し聞きたくなります。
あるいは、
「在宅の報告書を閉局後にまとめて書いています」
なら、
「外来と在宅の業務設計はどうなっているんだろう?」
という次の疑問が出てきます。
同じ5時間でも、
残業の原因が分かれば、その職場の仕事の回り方まで少し見えてくる。
ここが面白いところです。
「残業少なめ」なら、むしろこの5つを聞きたい
求人に、
残業少なめ
と書いてあったら、私は次のように聞きます。
1.月平均残業時間は何時間ですか?
まず数字を確認します。
「少なめ」という言葉だけより、数字がある方が比較しやすいです。
2.その数字は、この店舗の数字ですか?
会社全体なのか。
エリアなのか。
実際に応募する店舗なのか。
ここを確認します。
自分が働くのは「会社平均」ではなく、その店舗だからです。
3.残業するときは、主に何の仕事が残りますか?
これが一番聞きたい質問です。
例えば、
- 薬歴
- 最終患者対応
- 在宅
- 往診
- 棚卸し
- 会議
- 管理業務
何なのか。
「何時間残るか」から「なぜ残るか」へ一段掘る。
これだけで得られる情報がかなり増えます。
4.繁忙期はどのくらいになりますか?
月平均では少なくても、
花粉症シーズン。
インフルエンザなどが増える時期。
門前医療機関の診療状況。
店舗によって繁忙期があります。
年間平均だけではなく、
忙しい月の上限
も聞いておくと、自分が耐えられる働き方か想像しやすくなります。
5.残業せず帰れているのは、なぜですか?
少し変な質問に見えますが、私はこれも聞いてみたいです。
例えば、
「薬剤師人数に余裕があります」
「薬歴を勤務時間内に書けるように配置しています」
「在宅担当を分けています」
「事務スタッフがここまで担当しています」
「機械化しています」
という答えなら、
残業5時間という結果だけでなく、“なぜ5時間で済んでいるのか”
が分かります。
これはかなり安心材料になります。
逆に、
「みんな頑張って時間内に終わらせています」
だけなら、
……もう少し聞きたくなります。
「残業代込み」の求人なら、別に確認したいことがある
求人を見ていると、
「固定残業代○万円を含む」
という条件もあります。
固定残業代とは、実際の残業の有無にかかわらず、一定時間分の時間外労働などに対する割増賃金をあらかじめ定額で支払う仕組みです。
厚生労働省は、求人等で固定残業代を採用する場合、
- 何時間分なのか
- 金額はいくらか
- 固定残業代を除いた基本給はいくらか
- 設定時間を超えた分は追加で支給すること
などを明示するよう求めています。(厚生労働省「知って役立つ労働法」等)
例えば、
月給40万円(固定残業30時間分を含む)
と、
月給40万円+残業代別途
では意味が違います。
ただし、
固定残業30時間=毎月30時間残業する
という意味でもありません。
ここも数字だけで決めつけず、
「実際の平均残業は何時間なのか」
を別に確認する必要があります。
法律上の上限を下回っていれば「働きやすい」わけでもない
労働基準法では、時間外労働には原則として月45時間・年360時間という上限があります。(厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」)
ただ、転職先を探すときに、
「月45時間を超えていないから大丈夫」
とは当然なりません。
法律上の上限と、
自分が毎月どのくらいなら無理なく働けるか
は別の話です。
月10時間でも、
毎日決まって帰宅が遅れるのが嫌な人もいます。
逆に、
普段は定時で、棚卸しなど特定の日だけ少し残るなら気にならない人もいる。
だから結局、
「残業何時間ならホワイトか」という一つの数字にはできない
んですよね。
「残業月5時間」を、自分の1日に変換してみる
以前、年間休日について調べたときにも同じことを感じました。
年間休日120日。
残業月5時間。
数字だけを見ると比較しやすい。
でも、本当に知りたいのは、
その数字が自分の生活の中でどう現れるか
です。
残業月5時間なら、
毎日15分残るのか。
月に5回、1時間残るのか。
月末にまとめて5時間なのか。
往診の日だけ残るのか。
管理薬剤師になった途端に増えるのか。
ここまで変換すると、
同じ「月5時間」でも印象が変わります。
結局、「残業少なめ」は信用していい?
求人に書かれている数字は、一つの判断材料として使っていいと思います。
ただし、
「月5時間だから安心」まで一気に進まない。
私はそう考えます。
まず、
何の平均なのか。
次に、
何が終わらなくて残業になるのか。
そして、
忙しい時期や役職が変わったときはどうなるのか。
ここまで聞く。
残業時間は、単なる労働時間の数字ではありません。
その職場で仕事がどう回っているかの結果として出てくる数字
でもあります。
だから転職前に見るなら、
「残業は何時間ですか?」で終わらず、「残業するとき、何が残るんですか?」まで聞く。
これが、薬剤師求人の「残業少なめ」を見るときに一番大事なことだと思います。
参考資料
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
- 厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」
- 厚生労働省「知って役立つ労働法」
- ハローワークインターネットサービス「労働法等に関する解説」


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