求人票だけでは分からない。薬剤師が転職前に確認したい17項目

薬剤師が求人票を見ながら転職前に確認したい17項目をチェックしているイメージ 薬剤師のおしごと
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薬剤師の求人を見ていると、

「年収550万円」

「年間休日120日」

「残業少なめ」

「在宅あり」

このあたりは、わりとすぐ分かります。

でも、薬局で実際に働いてきた身としては、求人票を見ると別のところも気になります。

処方箋は何枚くらい来るんだろう。

その時間に薬剤師は何人いるんだろう。

一人になる時間はないのか。

在宅ありって、月に数件なのか。それとも毎日のように外へ出るのか。

休憩60分と書いてあるけれど、本当に60分休めるのか。

求人票を疑え、という話ではありません。

調べてみると、むしろ求人を出す側には、業務内容、勤務地、労働時間、休憩、休日、賃金など、さまざまな労働条件を明示するルールがあります。2024年4月からは、将来的な「業務の変更範囲」「就業場所の変更範囲」なども明示対象になりました。(職業安定法第5条の3、労働基準法第15条、改正職業安定法施行規則)

それでも分からないことがあります。

理由は単純で、

求人票に書かれているのは「条件」であって、「その店舗で1日働いたときに何が起こるか」までは書かれていないからです。

そこで今回は、公的資料や薬剤師関連の調査を調べながら、私自身の薬局での経験も踏まえて、

転職前に確認しておきたい17項目

を整理してみました。

全部を面接で聞く必要はありません。

でも、「入ってから知った」を少しでも減らすためのチェックリストとして使ってもらえればと思います。


1.1日の処方箋枚数

これは定番ですが、やっぱり確認したいです。

薬局には、取扱処方箋数に応じた薬剤師の配置基準があります。原則として、1日平均の取扱処方箋数を40で割った数以上の薬剤師を配置することとされています。(薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令)

ただし、

「40枚だから余裕がある」

とは限りません。

同じ40枚でも、

  • 一包化が多い
  • 散剤が多い
  • 疑義照会が多い
  • 在宅対応もある
  • 電話が頻繁に鳴る

となれば、忙しさはかなり変わります。

なので私は、

1日平均の処方箋枚数はどのくらいですか?

だけでなく、

多い日は何枚くらいになりますか?

まで聞いておきたいです。


2.その時間帯に薬剤師は何人いるのか

「薬剤師4名在籍」

と書いてあっても、4人が同時に働いているとは限りません。

常勤2人、パート2人かもしれない。

曜日によって人数が違うかもしれない。

午前中は3人だけど、夕方は1人になるかもしれない。

厚生労働省の薬局実態調査では、調査対象1,472施設のうち、常勤薬剤師が1人の薬局は32.9%、2人以下まで広げると62.4%でした。(厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」)

思っていた以上に、小規模な薬局は多いようです。

だから「在籍人数」だけではなく、

普段のシフトで何人いるのか

まで確認したいところです。


3.一人薬剤師になる時間はあるか

これは私ならかなり気にします。

「一人薬剤師の店舗ですか?」

と聞いて「違います」と言われても、それだけでは安心できません。

たとえば、

午前中は2人。

昼から1人。

夕方からまた2人。

というケースもありえます。

求人票では、こういう時間帯まで分からないことがあります。

一人になること自体よりも、

「何時から何時まで一人なのか。その時間にどのくらい患者さんが来るのか」

のほうが大事です。


4.事務スタッフは何人いて、どこまで担当しているか

薬剤師の人数だけを見ていると、意外と見落とします。

2019年の厚生労働省通知では、薬剤師の指示のもと、一定の条件を満たせば、非薬剤師がPTPシートの取り揃えなど判断を伴わない作業を行うことが示されています。(厚生労働省「調剤業務のあり方について」平成31年4月2日薬生総発0402第1号)

つまり、

事務スタッフがいるかどうかだけではなく、薬局内でどのように仕事を分担しているか

でも薬剤師の負担は変わります。

私なら、

事務さんは何人いますか?

に加えて、

調剤補助にはどのくらい入っていますか?

も聞きます。


5.何科の処方箋が多いのか

「1日60枚」

だけでは、まだ分かりません。

内科中心なのか。

小児科なのか。

精神科なのか。

眼科なのか。

総合病院の門前なのか。

処方内容によって、1枚にかかる時間はかなり違います。

さらに、

「内科」と書いてあっても、実際にはどんな処方が多いのか

までは求人票では分かりません。

枚数と科目はセットで見たいところです。


6.特定の医療機関にどのくらい依存しているか

これは少し薬局経営寄りの話です。

薬局では、特定の医療機関から受け付ける処方箋の割合、いわゆる「集中率」が調剤基本料にも関係します。(令和6年度調剤報酬改定)

転職する側からすると、

「集中率が○%だからどうだ」

まで判断する必要はないと思います。

ただ、

ほぼ1つのクリニックだけから処方箋が来る薬局なのか、さまざまな医療機関から来る薬局なのか

は知っておいてもいい。

門前の診療時間、医師の診療スタイル、閉院などの影響を受けやすいかどうかも変わるからです。


「在宅あり」は、もう少し詳しく聞きたい

ここからは、求人票で特に一言でまとめられやすい項目です。

7.個人在宅と施設在宅、それぞれ何件あるか

求人に、

「在宅あり」

と書いてある。

これだけでは、私はほとんど分からないと思っています。

月に数件なのか。

何十件もあるのか。

個人宅なのか。

施設なのか。

調剤担当と訪問担当が分かれているのか。

全部同じ薬剤師がやるのか。

在宅では、薬を作るだけでなく、訪問、移動、多職種との連携、報告書などの仕事も発生します。

なので、

在宅は個人と施設、それぞれ何件くらいありますか?

まで聞いておきたいです。


8.往診同行はあるか

在宅に関わると、医師の訪問診療へ薬剤師が同行する職場もあります。

これは薬剤師として面白い仕事でもあります。

一方で、

薬局を出ている時間が発生する仕事

でもあります。

私自身、往診同行を経験していますが、単純に「在宅あり」という一言では、この働き方までは想像しにくいです。

同行するのか。

するなら週何回なのか。

その間、店舗は誰が担当するのか。

移動時間を含め、どういう勤務になっているのか。

ここまで確認すると、だいぶ働く姿が見えてきます。


9.オンコール・休日対応はあるか

在宅をやっている薬局では、夜間や休日の相談に対応する体制を取っていることがあります。

ここで確認したいのは、

「24時間対応していますか?」だけではありません。

重要なのは自分に何が回ってくるかです。

オンコール当番はありますか?

月に何回くらいですか?

実際に電話が鳴る頻度はどのくらいですか?

出動することはありますか?

このあたりまで聞いて初めて、自分の生活への影響が分かります。


10.かかりつけ薬剤師をどの程度求められるか

かかりつけ薬剤師制度があることと、

職場でどの程度それを求められるか

は別の話です。

会社として積極的に進めているのか。

個人目標があるのか。

特にノルマのようなものはないのか。

求人票には、ここまで書かれていないことがあります。

制度そのものだけでなく、

その会社が制度をどう運用しているか

を聞いておきたいところです。


「残業少なめ」だけでは、まだ分からない

11.残業時間は「何が原因で発生しているか」

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、薬剤師の超過実労働時間は月平均約10時間とされています。(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)

ただし、全国平均を知っても、目の前の店舗がどうなのかは分かりません。

私はむしろ、

何の仕事で残業しているのか

を聞きたいです。

患者さんが閉局間際まで来るのか。

薬歴が残るのか。

在宅の報告書なのか。

棚卸しなのか。

人手不足なのか。

同じ「月10時間」でも原因によって話が変わります。


12.「休憩60分」は、本当に休憩になっているか

労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があります。(労働基準法第34条)

求人票にも、

休憩60分

と普通に書かれています。

でも薬局では、ここも確認したい。

特に薬剤師が少ない店舗です。

お昼を食べていても患者さんが来たら対応する。

電話が鳴ったら出る。

一人なので薬局から離れられない。

そんな状態なら、文字の上では60分でも、感覚はかなり違います。

実際の休憩はどうやって回していますか?

この質問は意外と大事だと思います。


13.年間休日数だけでなく、有給を実際に取れているか

「年間休日120日」

は分かりやすい数字です。

でも、働き始めてから差が出るのは、

休みたい日に休めるか

だったりします。

厚生労働省の就労条件総合調査では、医療・福祉業の年次有給休暇取得率は66.8%でした。(厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」)

ただし、これは医療・福祉全体の数字です。

転職先については、

前年度の有給取得状況はどうですか?

急な休みが出た場合は、誰がフォローしますか?

まで聞くほうが実態に近づけます。


14.店舗異動はどこまであり得るか

2024年4月から、求人募集時には「就業場所の変更の範囲」を明示することになりました。(改正職業安定法施行規則)

これはありがたい変更です。

ただ、

「法人の定める店舗」

「全店舗」

と書かれていたら、まだ分からない。

実際にはほとんど異動しない会社なのか。

数年ごとに異動するのか。

県をまたぐ可能性があるのか。

ここは確認しておきたいです。


15.他店舗への応援勤務はどのくらいあるか

個人的には、異動より見落としやすいと思うのがこちらです。

所属店舗は変わらない。

でも、人が足りない店舗へ応援に行く。

たまにならいい。

ただ、

週に何度も応援へ行く

となると、想像していた働き方とはかなり違います。

応援勤務はありますか?

だけではなく、

実際には月に何回くらいありますか?

一番遠い店舗だとどのくらいですか?

まで聞いておくと安心です。


16.管理薬剤師になる可能性はあるか

「将来的には管理薬剤師も」

と言われたときも、もう一段聞きます。

いつ頃なのか。

本人の希望は考慮されるのか。

手当はいくらなのか。

何を任されるのか。

人員管理、在庫、行政対応など、一般薬剤師とは違う業務も発生します。

管理薬剤師は単に、

「年収がちょっと上がる役職」

ではありません。

責任と仕事の範囲も変わります。

管理薬剤師を経験してきたからこそ、ここは曖昧なまま入社しないほうがいいと思っています。


17.薬歴を勤務時間内に書けるか

最後は、かなり地味です。

でも私はかなり重要だと思っています。

薬歴、いつ書いていますか?

です。

患者さんが途切れたタイミングで書けるのか。

閉局後にまとめて書くのか。

薬歴用PCは十分あるのか。

入力支援ツールはあるのか。

投薬をたくさん担当する人ほど薬歴が残る仕組みになっていないか。

薬歴作成時間についての薬剤師アンケートでは、約7割が1件あたり5分以内と回答した資料もあります。(m3.com「薬歴は時間との闘い」)

1件は数分でも、10件残れば数十分です。

求人票の「残業時間」だけを見るより、「薬歴をいつ書いているか」を聞いたほうが、働き方が想像できることもあります。


17個全部聞く必要はない。私ならまずこの5つ

ここまで17項目書きました。

でも面接で、

「質問が17個あります」

と言ったら、さすがに面接官もちょっと構えると思います。

私ならまず、

①1日の処方箋枚数と、その時間帯の薬剤師人数

②一人薬剤師になる時間

③在宅・オンコールの実際の業務量

④休憩と残業の実態

⑤薬歴をいつ書いているか

この5つを優先します。

これだけでも、

その店舗で1日働いている自分

がかなり想像しやすくなると思います。


求人票は「間違っている」のではなく、「解像度が足りない」

今回調べていて、一番しっくりきたのはここでした。

求人票には、

給与。

勤務地。

勤務時間。

休憩。

休日。

業務内容。

かなり大切なことが書かれています。

でも、

そこで働く1日の解像度までは上げてくれません。

「処方箋60枚」

だけではなく、

誰と60枚を見るのか。

「在宅あり」

だけではなく、

誰が、何件、いつ行くのか。

「休憩60分」

だけではなく、

その60分、本当に仕事から離れられるのか。

そこまで分かって初めて、

自分に合う職場なのか

を考えられるのだと思います。

転職は、入ってみなければ分からないこともあります。

それでも、

入る前に聞けることまで、入ってから知る必要はありません。

求人票を見て気になる職場が見つかったら、条件だけで終わらせず、

「実際の1日はどうなっていますか?」

まで少し掘ってみる。

それだけでも、転職後の「思っていたのと違った」は減らせるかもしれません。


転職前チェックリスト

最後に、今回の17項目をまとめておきます。

  • 1日の平均処方箋枚数・繁忙日の枚数
  • 実際のシフト上の薬剤師人数
  • 一人薬剤師になる曜日・時間帯
  • 事務スタッフの人数と業務範囲
  • 主な応需科目と処方内容
  • 特定医療機関への処方箋集中度
  • 個人在宅・施設在宅の件数
  • 往診同行の有無と頻度
  • オンコール・休日対応
  • かかりつけ薬剤師関連の運用
  • 実際の残業時間とその原因
  • 休憩の取り方
  • 有給休暇の取得状況
  • 店舗異動の範囲と頻度
  • 他店舗への応援勤務
  • 管理薬剤師になる可能性と業務内容
  • 薬歴をいつ、どのように書いているか

気になる求人があったら、全部ではなくてもいいので、ぜひいくつか確認してみてください。


主な参考資料

厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」

厚生労働省「調剤業務のあり方について」(平成31年4月2日薬生総発0402第1号)

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」

厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」

厚生労働省「薬剤師確保のための調査・検討事業」

「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」

労働基準法第34条

改正職業安定法施行規則

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