「もう薬剤師辞めたいな」
働いていると、そう思うことがあります。
忙しい。
給料が上がらない。
人間関係がしんどい。
休めない。
毎日同じことの繰り返しに感じる。
私自身、一度薬剤師を離れて、Unityエンジニアとして働いたことがあります。
その後、いろいろあって今はまた薬局で薬剤師をしています。
一度本当に離れてみて思ったのは、
「薬剤師を辞めたい」と「今の働き方を辞めたい」は、同じようでかなり違う
ということでした。
当時は全部まとめて、
「薬剤師じゃない仕事がしたい」
と思っていました。
でも、職種を変えたことで初めて、
薬剤師だから嫌だったこと。
その会社だから嫌だったこと。
逆に、薬剤師だから自分に合っていたこと。
が少しずつ分かりました。
なので今回は、
「薬剤師を辞めたい」と思ったとき、いきなり異業種へ行く前に何を切り分ければいいのか
を考えてみます。
「薬剤師を辞めたい」の中身は、意外とバラバラ
厚生労働省の「薬剤師確保のための調査・検討事業」では、薬局側が把握している退職理由として、
- 職場の人間関係
- 体調上の理由
- 働く場所の不一致
- 働き方の不一致
- 給与水準の不一致
- 職場環境への不満
など、複数の理由が挙げられています。(厚生労働省「薬剤師確保のための調査・検討事業」)
逆に一番多いのは「一身上の都合」です。
つまり、会社側から見ても、
「なぜ辞めたのか、実際のところまでは分からない」
ケースがかなりあるようです。
そして本人側も、
「薬剤師が嫌」
と一言でまとめてしまうと、本当の原因が見えなくなることがあります。
なので私は、まず5つに分けて考えます。
1.「薬剤師の仕事そのもの」が嫌なのか
まず一番大きなところです。
例えば、
- 薬の勉強を続けるのがつらい
- 調剤そのものに興味が持てない
- 患者対応をしたくない
- 医療事故への責任が重すぎる
- 医療職として働くこと自体がしんどい
- そもそも薬に興味がなくなった
こういう場合です。
これは、転職して薬局Aから薬局Bへ移っても、あまり変わらない可能性があります。
薬局が変わっても、
薬を扱う。
患者さんに説明する。
処方内容を確認する。
薬歴を書く。
という薬剤師としての仕事は残るからです。
ここまで嫌になっているなら、
「どの薬局に転職するか」ではなく、「薬剤師を続けるのか」
を考えたほうがいいかもしれません。
2.嫌なのは「薬剤師」ではなく、今の職場ではないか
一方で、こちらは転職でかなり変わる可能性があります。
例えば、
- 上司と合わない
- 人間関係が悪い
- 人手不足
- 一人薬剤師が多い
- 休憩が取れない
- 残業が多い
- 応援勤務が多い
- 店舗異動が多い
- 会社の方針が合わない
こういう場合。
これらは、
薬剤師という資格そのものとはあまり関係ありません。
厚生労働省の調査でも、薬局側が把握する退職理由として「職場の人間関係」「働く場所の不一致」「職場環境への不満」などが挙げられています。(厚生労働省「薬剤師確保のための調査・検討事業」)
もし、
薬のことを考えるのは嫌いじゃない
患者さんと話すのも嫌いじゃない
でも、この店舗に行くのが嫌だ
なら、
辞めたいのは、
薬剤師ではなく、その職場
なのかもしれません。
3.仕事ではなく「働き方」が合っていないのではないか
これも結構大きいと思います。
正社員。
週5日。
土曜日勤務。
遅番。
残業。
通勤1時間。
オンコール。
これらが全部セットになって、
「薬剤師辞めたい」
になっている可能性があります。
でも例えば、
正社員からパートへ。
週5から週4へ。
調剤薬局から病院へ。
在宅ありから外来中心へ。
大手チェーンから地域密着型へ。
働き方を変えたらどうでしょう。
仕事そのものへの感じ方まで変わるかもしれません。
厚生労働省の調査でも、薬局の退職理由として「働き方の不一致」が挙げられています。(厚生労働省「薬剤師確保のための調査・検討事業」)
なので、
「薬剤師を続けるか・辞めるか」の2択にしなくてもいい
と思っています。
4.嫌なのは「今やっている薬剤師業務」ではないか
薬剤師といっても、仕事は結構違います。
調剤薬局。
病院。
ドラッグストア。
在宅。
企業。
さらに同じ調剤薬局でも、
外来中心。
個人在宅中心。
施設在宅中心。
管理薬剤師。
一人薬剤師。
大型門前。
クリニック門前。
では、かなり違います。
例えば求人票の「在宅あり」だけでも、個人在宅、施設在宅、往診同行、オンコールなど、実際の仕事内容は大きく変わります。
→ 薬剤師求人の「在宅あり」って何をする?個人在宅・施設在宅・往診同行はけっこう別物だった
なので、
「調剤薬局が嫌」
と思っていても、
本当は、
施設在宅が嫌なのかもしれない。
あるいは、
管理薬剤師として人や数字を見る仕事が嫌なのかもしれない。
逆に、
外来調剤はつまらなかったけれど、
在宅で患者さんの生活まで見る仕事なら面白い。
という人もいると思います。
職種だけでなく、
業務を分解して考える
のも大事です。
5.「この先ずっとこれなのか」が嫌なのではないか
個人的には、これもかなりありました。
目の前の仕事そのものより、
「10年後もこれをやっているのかな」
と考えたときに苦しくなる。
年収。
役職。
仕事内容。
スキル。
将来性。
そこに上限を感じると、
今の職場がものすごく悪いわけではなくても、
「辞めたい」
という気持ちが出てきます。
これは少し厄介です。
給料を上げれば解決するのか。
管理薬剤師になればいいのか。
違う業態へ行けばいいのか。
副業を作ればいいのか。
完全に別の仕事へ行きたいのか。
人によって答えが違います。
私も一度、薬剤師の外へ出ました。
結果的に今は戻っています。
でも、それを失敗だったとはあまり思っていません。
外に出たからこそ、
「薬剤師の仕事のどこが自分に合っていたのか」
も分かったからです。
「薬剤師を辞めたい」を5つに分けてみる
ここまでを整理すると、こんな感じです。
| 今感じていること | 次に考えること |
|---|---|
| 薬剤師業務そのものが嫌 | 異業種・資格を使わない働き方 |
| 今の会社・店舗が嫌 | 同業他社への転職 |
| 働き方が嫌 | パート・派遣・勤務条件変更 |
| 今担当している業務が嫌 | 業態・店舗・役割変更 |
| 将来が見えない | キャリア変更、副業、異業種も含めて検討 |
こうしてみると、
「薬剤師を辞める」以外にも選択肢は結構あります。
私なら、辞める前に求人を一度見てみる
これは、
「転職サイトに登録しましょう」
という意味ではありません。
まず、
今の自分が、外ではどんな条件になるのか
を知るためです。
例えば今、
年収500万円。
年間休日110日。
残業月20時間。
在宅・オンコールあり。
だとします。
他社を見たら、
年収はほぼ同じでも、
年間休日125日。
外来中心。
残業月5時間。
という求人があるかもしれない。
それを見たら、
「薬剤師を辞めたい」
ではなく、
「今の会社を辞めたいだけだった」
と気付くかもしれません。
逆に、
他社をいろいろ見ても、
「どれも全然やりたいと思えない」
なら、
薬剤師そのものから離れる選択を本格的に考えてもいい。
つまり求人を見ることは、
転職するためだけではなく、自分が何を嫌がっているのかを確認する材料
にもなります。
ただし、求人票だけで判断しない
ここは前の記事でも調べました。
求人票には、
給与。
勤務時間。
休日。
勤務地。
業務内容。
など大切なことが書かれています。
ただ、
- 一人薬剤師になる時間
- 実際の薬剤師人数
- 応援勤務の頻度
- 本当に休憩できるか
- 在宅の実際の件数
- オンコールの頻度
- 薬歴をいつ書いているか
までは分からないことがあります。
→ 求人票だけでは分からない。薬剤師が転職前に確認したい17項目
別の会社へ行けば解決すると思って転職したのに、
また同じことで悩む。
これが一番避けたいところです。
じゃあ、転職で解決しやすいのはどんな場合?
ここまで調べたり、自分の経験を振り返ったりすると、
比較的、
転職で変えやすいもの
と、
転職だけでは変わりにくいもの
があります。
転職で変えやすい
- 給与
- 勤務地
- 通勤時間
- 休日
- 勤務時間
- 店舗規模
- 業態
- 在宅の有無
- 一人薬剤師の有無
- 異動範囲
- 会社の制度
転職だけでは変わりにくい
- 薬剤師そのものへの興味
- 医療職としての責任
- 患者対応そのものへの苦手意識
- 薬の勉強を続ける必要性
- 「医療の仕事をしたくない」という感覚
もちろん、きれいに分けられるものではありません。
でも、
自分が嫌なのはどちら側なのか
を考えるだけでも、次の選択はかなり変わると思います。
「辞めるか、耐えるか」の2択にしなくていい
仕事が嫌になると、
「辞める」
か、
「我慢する」
か。
この2択になりがちです。
でも、その間には結構あります。
店舗を変える。
会社を変える。
業態を変える。
正社員をやめる。
勤務日数を減らす。
管理薬剤師をやめる。
在宅から離れる。
逆に在宅へ行く。
副業を始める。
異業種について調べてみる。
求人だけ見てみる。
今の会社に残る。
選択肢を増やすと、
辞めるかどうかを今日決めなくてもよくなります。
私は一度、完全に別の仕事へ行きました。
だからこそ、
「薬剤師を辞めたい」
と思うこと自体は、別におかしなことではないと思っています。
ただ、
何を辞めたいのかだけは、できれば分けて考えたほうがいい。
そこを間違えると、
環境だけ変えればよかったのに資格そのものを捨ててしまったり、
逆に、本当は別の仕事をしたいのに薬局を転々としてしまったりするかもしれません。
迷ったら、まずこの5つを自分に聞いてみる
最後にまとめます。
1.薬剤師の仕事内容そのものが嫌なのか?
2.今の会社・店舗が嫌なのか?
3.勤務時間や休日など、働き方が嫌なのか?
4.在宅・管理薬剤師など、今の役割が嫌なのか?
5.この先のキャリアが見えないことが嫌なのか?
この5つを分けるだけでも、
「じゃあ次に何を調べればいいか」
が見えやすくなります。
もし、
「薬剤師は続けてもいい。でも今の職場ではない気がする」
というところまで整理できたなら、
そこで初めて他の求人と比べてみる。
その順番でも遅くないと思います。
主な参考資料
厚生労働省「薬剤師確保のための調査・検討事業」
厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」


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