薬剤師の求人を見て、
年収も悪くない。
年間休日も十分。
家からも近い。
「ここ、けっこういいかも」
と思った。
でも、もし職場見学ができるなら、私は見てから決めたいです。
理由は単純で、
求人票には「条件」は書いてあっても、「そこで働く1日」までは書いていないからです。
厚生労働省も、開示された情報だけでは判断できないものについて、職場見学や配属予定部署のメンバーとの意見交換などを情報提供の方法として挙げています。また、賃金や労働時間など、求職者が選考への影響を気にして質問しにくい情報については、事前提供や職業紹介事業者を通じた提供が望ましいとしています。(厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」)
つまり職場見学は、
「なんとなく雰囲気を見るイベント」ではなく、求人票の解像度を上げる機会
として使ったほうがいい。
では薬剤師の場合、何を見ればいいのか。
今回は、薬局で働いてきた経験とこれまで調べてきた資料をもとに、10項目に整理します。
1.「在籍人数」ではなく、その時間に何人いるか
まず見たいのが人員です。
求人票には、
「薬剤師4名」
などと書かれていることがあります。
でも、
常勤2人+パート2人なのか。
4人とも同じ時間にいるのか。
午前は3人だけど夕方は1人なのか。
これでは働き方が全然違います。
厚生労働省の薬局実態調査では、常勤薬剤師が1人だけの薬局が32.9%、2人以下まで含めると62.4%でした。(厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」)
なので見学では、
「今、何人で回しているか」
を見ます。
そして質問できるなら、
曜日や時間帯によって薬剤師人数はどのくらい変わりますか?
まで聞いておきたいです。
2.一人薬剤師になる時間がないか
これも在籍人数だけでは分かりません。
見学した時間には薬剤師が3人いた。
でも、
昼休み。
夕方。
土曜日。
特定の曜日。
だけ一人になることもあります。
なので、
一人薬剤師になる曜日や時間帯はありますか?
と聞きます。
一人薬剤師そのものが悪いわけではありません。
大事なのは、
「一人になる時間」と「その時間の忙しさ」
です。
3.薬剤師と事務スタッフは、どう仕事を分担しているか
薬剤師だけを見るのではなく、事務スタッフも見たいです。
厚生労働省の通知では、一定の条件下で、薬剤師の指示のもと非薬剤師がPTPシートの取り揃えなど判断を伴わない作業を行うことが示されています。(厚生労働省「調剤業務のあり方について」平成31年4月2日薬生総発0402第1号)
つまり同じ、
「薬剤師2人+事務2人」
でも、
薬剤師がほぼすべての作業を行う薬局と、
うまく役割分担している薬局では違います。
見学では、
誰が何をしているか
を見ます。
事務スタッフが受付だけなのか。
ピッキング等の補助にも入っているのか。
電話対応は誰がしているのか。
細かいところですが、日々の仕事量にはかなり関係します。
4.処方箋枚数より「その瞬間の忙しさ」を見る
求人票には、
「処方箋60枚/日」
のように書いてあることがあります。
でも60枚が、
9時から18時まで均等に来るのか。
午前中に一気に来るのか。
夕方に集中するのか。
では違います。
さらに、
内科中心なのか。
小児科なのか。
一包化が多いのか。
疑義照会が多いのか。
でも変わります。
薬局には、原則として1日平均40枚の処方箋に対して1人以上の薬剤師を配置する基準があります。
ただし、これはあくまで配置基準です。
「40枚なら楽」「80枚を2人なら余裕」とまでは言えません。
見学中に患者さんが来ているなら、
スタッフがどんな動きをしているか。
投薬待ちはどのくらいか。
電話や疑義照会が重なっていないか。
を見ると、数字だけより少し働く姿を想像しやすくなります。
5.薬歴はいつ書いているか
個人的には、かなり見たいところです。
投薬が終わった薬剤師が、
そのまま薬歴を書いているのか。
次の患者さんへすぐ移っているのか。
薬歴用のPCや端末は十分あるのか。
このあたりです。
一件数分でも、
10件、20件と残れば結構な時間になります。
なので可能なら、
薬歴は基本的に勤務時間内に入力できていますか?
と聞いてみます。
「残業月○時間」だけを聞くより、
なぜ残業するのか
を知る材料にもなります。
6.在宅の薬が大量に置かれていないか
これは在宅をやっている薬局なら見たいです。
もちろん、
薬がたくさんある=悪い薬局
ではありません。
ただ、
大量の一包化。
施設ごとのケース。
お薬カレンダー。
配薬準備。
訪問用の物品。
などがあれば、
「在宅あり」の中身が少し見えてきます。
前の記事でも調べましたが、在宅には個人在宅、施設在宅、往診同行、報告書作成、オンコールなど、かなり違う仕事が含まれます。
→ 薬剤師求人の「在宅あり」って何をする?個人在宅・施設在宅・往診同行はけっこう別物だった
見学で在宅関連のものが多ければ、
個人在宅と施設在宅は、それぞれどのくらいありますか?
外来と在宅は同じ薬剤師が担当しますか?
と聞いてみます。
7.調剤機器・電子薬歴・PCの数
ここも地味ですが大事です。
例えば、
- 散剤分包機
- 錠剤分包機
- 監査システム
- 電子薬歴
- タブレット
- 薬歴入力用PC
- 自動調剤関連設備
など。
マイナビ薬剤師やファルマスタッフも、職場見学では調剤設備や使用機器を確認することをポイントとして挙げています。(マイナビ薬剤師「薬剤師の転職には職場見学が必須?その理由やポイントを紹介」、ファルマスタッフ「薬剤師の転職には店舗見学が必要?その理由と見るべきポイントを解説」)
ただ、
機械が最新だから良い職場
とまでは言えません。
私がむしろ見たいのは、
人数に対して十分あるか
です。
薬剤師4人なのに薬歴入力用PCが1台しかない。
となれば、
入力待ちが発生しないのかな?
と気になります。
設備の豪華さより、実際の業務フローを見ます。
8.休憩する場所と、休憩中の人が本当に仕事から離れられているか
求人票には、
休憩60分
と書いてあります。
労働基準法でも、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることとされています。(労働基準法第34条)
でも、
休憩室があるのか。
調剤室の隅で食べるのか。
患者さんが来たら呼ばれるのか。
電話対応をするのか。
は求人票では分かりません。
見学で休憩室まで案内してもらえるなら、見ておきたいです。
そして可能なら、
お昼休憩は交代で取る形ですか?
と聞く。
「60分ありますか?」
より具体的です。
9.スタッフ同士の会話は「仲良さそう」ではなく、仕事が回っているかを見る
職場見学の記事にはよく、
「スタッフの表情を見ましょう」
と書いてあります。
私は、これだけで人間関係を判断するのは少し怖いと思っています。
たまたま忙しい日かもしれない。
見学者がいるから普段より丁寧かもしれない。
逆に無口でも、単に仕事に集中しているだけかもしれません。
なので、
「楽しそうか」より「仕事上のコミュニケーションが成立しているか」
を見ます。
例えば、
「これお願いします」
「こっち確認しました」
「○○さん休憩行ってください」
のように、
必要な情報がちゃんと共有されているか。
薬剤師と事務スタッフの間で仕事が止まっていないか。
困ったときに誰かへ質問できているか。
こちらのほうが、見学時間だけでも比較的観察しやすいと思います。
職場の雰囲気やスタッフ間のやり取りは、薬剤師向けの職場見学ガイドでも確認項目として挙げられています。(マイナビ薬剤師「薬剤師の転職には職場見学が必須?その理由やポイントを紹介」)
ただし、
短い見学だけで人間関係の良し悪しまで断定しない。
ここは大事です。
10.最後に「ここで自分が働く1日」を聞く
結局、私はこれが一番いい質問だと思います。
入社した場合、典型的な1日はどんな流れになりますか?
です。
例えば、
8:45 出勤
9:00 開局
午前 外来調剤
13:00 休憩
14:00 個人在宅2件
16:00 帰局
17:00 報告書
18:00 閉局
ここまで聞けば、
「在宅あり」「休憩60分」「18時まで」
という求人票の文字が、かなり具体的になります。
さらに、
忙しい日はどう変わりますか?
まで聞ければもっといい。
厚生労働省も、職場情報は求人票だけでなく、面談や職場見学、職業紹介事業者など複数の方法で提供することを挙げています。(厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」)
求人票と見学は別物ではなく、
求人票で分からなかったところを、見学で埋める
くらいに考えるといいと思います。
逆に、職場見学だけでは分からないこともある
ここまで、
「見学しましょう」
と書いてきました。
でも、職場見学も万能ではありません。
30分や1時間見ただけで、
- 本当の残業時間
- 有給の取りやすさ
- 離職率
- 一人薬剤師になる頻度
- 応援勤務
- オンコール
- 上司との人間関係
- 昇給
- 人事評価
まで判断するのは難しいです。
実際、厚生労働省も、求職者が選考への影響を気にして聞きにくい労働時間などの情報について、企業側からの事前提供や職業紹介事業者を通じた情報提供を挙げています。(厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」)
なので、
見ることと、聞くことを分ける。
これがいいと思います。
職場見学で「見ること」と「聞くこと」
自分の目で見やすいこと
- 実際のスタッフ人数
- スタッフの動き
- 調剤機器
- PC・電子薬歴環境
- 患者さんの流れ
- 在宅関連の作業環境
- 休憩スペース
- 仕事上のコミュニケーション
質問しないと分かりにくいこと
- 一人薬剤師になる時間
- 残業の実態
- 有給取得
- 応援勤務
- 異動
- オンコール
- 在宅件数
- 往診同行
- 薬歴を勤務時間内に書けるか
この2つを分けておくだけでも、職場見学がかなりやりやすくなります。
私なら、この10項目をメモして持っていく
最後にチェックリストにします。
- 実際のシフト上の薬剤師人数
- 一人薬剤師になる時間
- 事務スタッフとの業務分担
- 処方箋の来局状況・忙しい時間帯
- 薬歴を書くタイミング
- 在宅業務の作業環境
- 調剤機器・電子薬歴・PC
- 休憩場所と休憩方法
- スタッフ間の仕事上のコミュニケーション
- 入社後の典型的な1日の流れ
全部覚えていく必要はありません。
スマホにメモしておけば十分です。
職場見学は「いい職場を見抜く」ためではない
今回調べてみて、私はここが一番大事だと思いました。
職場見学へ行って、
「ここは良い薬局だ!」
と見抜こうとしなくていい。
短時間では分からないことも多いからです。
むしろ、
求人票を見て、
「ここが分からない」
と思ったところを実際に確認する。
そして、
自分がここで働く姿を想像できるところまで情報を増やす。
それくらいがちょうどいいと思います。
厚生労働省の「しょくばらぼ」でも、勤務実態や採用状況などの職場情報を企業ごとに検索・比較できるようになっています。転職先によっては、見学前にこうした公的な職場情報を確認しておくのも一つの方法です。(厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」)
求人票。
企業情報。
職場見学。
面接。
転職エージェント。
どれか一つだけを信用するのではなく、
それぞれから少しずつ情報を集める。
そのほうが、転職後の
「聞いていたのと違った」
を減らせるのではないかと思います。
求人票だけでは分からない項目もまとめています
そもそも転職前に何を確認しておけばいいのかについては、こちらの記事で詳しく整理しました。
→ 求人票だけでは分からない。薬剤師が転職前に確認したい17項目
また、
「自分で全部確認するのは難しい」
「残業や離職理由など、面接では少し聞きにくい」
という場合は、転職エージェントを通して確認してもらう方法もあります。
主な参考資料
厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」
厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」
厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」
厚生労働省「調剤業務のあり方について」
労働基準法
マイナビ薬剤師「薬剤師の転職には職場見学が必須?その理由やポイントを紹介」
ファルマスタッフ「薬剤師の転職には店舗見学が必要?その理由と見るべきポイントを解説」


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