薬剤師の転職について調べていると、
「転職は3回以上になると不利」
という話をよく見かけます。
私も、
「薬剤師って比較的転職しやすい仕事だけど、さすがに何回も転職すると厳しくなるのかな」
と思っていました。
さらに調べると、
「薬剤師の平均転職回数は2.5回」
という数字まで出てきます。
2.5回。
なるほど。
だったら3回目あたりから「多い」と判断される。
……一見、かなり筋が通っています。
でも気になりました。
この2.5回って、どこから出てきた数字なんだろう。
そこで今回は、
「薬剤師は転職3回以上になると不利」
という、ネットでよく見かける説を出典までたどってみました。
先に結論。「3回以上なら不利」という公的な基準は見つからなかった
最初に結論です。
今回、厚生労働省の資料や薬剤師向け転職サービス各社の資料まで確認しましたが、
「薬剤師は転職3回以上になると採用で不利になる」
という公的な基準や全国統計は確認できませんでした。
もちろん、
転職回数が多ければ採用側が、
「またすぐ辞めないだろうか」
と気にする可能性はあります。
ファルマスタッフも、短期間に複数回転職している場合には、採用側から定着性を懸念される可能性があると説明しています。(ファルマスタッフ「薬剤師の転職回数は多くても大丈夫?面接での伝え方も解説」)
ただ、
3回という数字を境に突然アウトになるわけではない。
ここは分けて考えたほうがよさそうです。
では「薬剤師の平均転職回数2.5回」はどこから来た?
ここが今回、一番気になったところです。
検索すると、
薬剤師の平均転職回数は2.5回
という説明がかなり出てきます。
ところが、厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」で確認できるのは、薬剤師の平均勤続年数8.8年などです。
「全国の薬剤師の平均転職回数2.5回」という統計ではありません。(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)
では2.5回は何か。
調べてみると、似た数字を出している調査はいくつかありました。
ファルマスタッフのデータでは平均2.4回
ファルマスタッフは2024年度の登録者データから、
平均転職回数2.4回
としています。
ただし、注記を見ると、
「ファルマスタッフに登録した薬剤師の経験社数より算出」
です。(ファルマスタッフ「薬剤師の転職回数は多くても大丈夫?面接での伝え方も解説」)
ここは重要です。
ファルマスタッフに登録している時点で、
転職を検討している。
あるいは転職経験がある。
という人が多く含まれる可能性があります。
つまり、
日本の薬剤師全員を無作為に調べた平均ではありません。
2.4回という数字自体がおかしいわけではない。
でも、
日本の薬剤師は平均2.4回転職する
とそのまま読み替えるのは少し違います。
薬キャリの調査では2.5回。ただし「転職経験者」が対象
薬キャリの過去のアンケートでも、
平均転職回数2.5回
という数字があります。
こちらは転職経験がある薬剤師への調査で、回答者の平均年齢は43.9歳。
さらに「6回以上」を6回として平均を計算しています。(薬キャリ職場ナビ「薬剤師の転職動向アンケート」)
これも、
薬剤師全体の平均
ではありません。
転職したことがある人だけを対象にして平均を取れば、当然0回の人は入ってきません。
ここまで見てくると、
「平均2.5回だから、3回以上は平均超え」
という説明は、
ちょっと雑だった
ことが分かります。
もっと面白いのは、年齢で全然違うこと
さらにファルマスタッフの2024年度データを見ると、年代別ではかなり差があります。
| 年代 | 平均転職回数 |
|---|---|
| 20代 | 0.4回 |
| 30代 | 1.6回 |
| 40代 | 3.1回 |
30代では、3回以上転職している人が23.2%。
40代では平均そのものが3.1回で、5回以上の転職経験者も23.4%いました。(ファルマスタッフ「薬剤師の転職回数は多くても大丈夫?面接での伝え方も解説」)
これを見ると、
「3回」という数字だけ切り取っても、あまり意味がない
ことが分かります。
例えば、
25歳で3回。
45歳で3回。
同じ「3回」ですが、意味はかなり違います。
採用側が本当に気にしているのは「3」という数字なのか
ここまで調べて、
私はむしろこっちが重要だと思いました。
採用する側が知りたいのは、
「3回転職したか」ではなく、「この人はうちでもすぐ辞めるのか」
ではないでしょうか。
例えば、同じ転職3回でも、
Aさん
25歳。
新卒入社後、
8カ月
↓
10カ月
↓
6カ月
↓
現在転職活動中
だった場合。
採用側としては、
「何があったんだろう」
とは思いそうです。
一方、
Bさん
45歳。
1社目8年
↓
結婚・転居で転職
↓
2社目7年
↓
管理薬剤師へキャリアアップ
↓
3社目8年
↓
現在転職活動中
ならどうでしょう。
転職回数は同じ3回です。
でも、
受ける印象はかなり違います。
つまり見るべきなのは、
転職回数そのものより、「期間」と「理由」
なのだと思います。
「短期離職が連続しているか」は確かに見られそう
これは転職サービス側の説明とも一致します。
ファルマスタッフは、転職回数が多い場合について、
短い期間で複数回転職していると「採用してもすぐに辞めるのでは」と懸念される可能性がある
としています。
その一方で、転職理由やキャリア形成に一貫性があれば、回数が多いだけで必ず不利になるわけではないとも説明しています。(ファルマスタッフ「薬剤師の転職回数は多くても大丈夫?面接での伝え方も解説」)
これなら納得できます。
問題なのは、
3回目だから
ではなく、
「なぜ毎回辞めたのか説明できない」
ことなのかもしれません。
そもそも薬剤師は、転職を経験している人が珍しくない
薬キャリの調査では、転職経験者の中で最も多いのは1回ですが、2回、3回と複数回転職している薬剤師もかなり存在しています。
6回以上と回答した人も9%いました。(薬キャリ職場ナビ「薬剤師の転職動向アンケート」)
さらに、厚生労働省の薬剤師確保に関する調査では、
薬剤師が「不足している」と回答した施設は、病院64.8%、薬局41.2%
でした。(厚生労働省「令和3年度薬剤師確保のための調査・検討事業」)
もちろん、
「人手不足だから転職何回でもOK」
という意味ではありません。
地域や職場によって採用状況は違います。
ただ、
薬剤師の採用市場では、複数回転職した人そのものが珍しい存在ではない
とは考えられそうです。
じゃあ「転職回数が多い」とは、何回なのか
ここまで調べた結果、
私は、
「○回以上なら多い」と一律に決めるのは無理がある
と思います。
むしろ、
年齢
20代で4回なのか。
50代で4回なのか。
勤続期間
10年間で4回なのか。
30年間で4回なのか。
転職理由
毎回人間関係なのか。
結婚・転居・介護などなのか。
キャリアアップなのか。
キャリアの一貫性
調剤薬局A
↓
調剤薬局B
↓
在宅専門薬局
↓
管理薬剤師
なのか。
毎回まったく違う理由で職場を変えているのか。
次の職場との相性
病院なのか。
調剤薬局なのか。
企業なのか。
でも評価は変わります。
なので、
「転職回数」という1個の数字だけでは判断できません。
私なら「回数」より、この5つを確認する
もし転職回数が多くて不安なら、履歴書を見ながら次の5つを確認します。
1.それぞれ何年働いたか
短期離職が連続しているのか。
長期間働いた職場もあるのか。
まず分けます。
2.なぜ辞めたのか
全部、
「人間関係が悪かった」
「会社が嫌だった」
では説明しにくくなります。
でも、
転居。
結婚。
勤務条件。
キャリアアップ。
家庭事情。
会社都合。
など、理由は人それぞれです。
3.転職によって何が増えたか
例えば、
一般薬剤師
↓
在宅経験
↓
管理薬剤師
↓
マネジメント
と経験が積み上がっていれば、
複数回の転職が、
キャリア形成の過程
として説明できる可能性があります。
4.今回、何を変えたいのか
ここが曖昧だと、
また同じ理由で辞める可能性があります。
「今の職場が嫌だから」
だけではなく、
次は何を求めるのか
まで整理する。
5.次の職場なら、その問題は本当に解決するのか
これも大事です。
残業が嫌で辞めた。
でも次も残業が多い。
一人薬剤師が嫌で辞めた。
でも次も夕方は一人。
それでは転職回数だけ増えてしまいます。
だから、求人票だけでは分からない部分まで確認する。
→ 求人票だけでは分からない。薬剤師が転職前に確認したい17項目
→ 薬剤師の職場見学はどこを見る?求人票では分からない10のチェックポイント
ここまでやって、
「次なら長く働けそう」
と思えるところを探したほうがいいと思います。
むしろ気をつけたいのは、「転職回数が増えるのが怖いから動けない」こと
今回のテーマを調べる前は、
私も、
「3回を超えると不利になるなら、できるだけ動かないほうがいいのかな」
という話になると思っていました。
でも、少し違いました。
もちろん、なんとなく転職を繰り返すのは避けたい。
一方で、
「次で3回目だから」
という理由だけで、
明らかに合っていない職場に何年も残るのも変な話です。
大事なのは、
次の転職を最後に近づけるために、今回は何を確認するか
だと思います。
結論。「3回以上」は警戒ラインではなく、説明が必要になってくる目安くらい
今回調べた範囲では、
「薬剤師は3回以上転職すると不利」
という公的なルールや明確な境界線は確認できませんでした。
そして、よく見る「平均転職回数2.4〜2.5回」という数字も、
全国の薬剤師全員を対象にした公的統計ではなく、
転職サービス登録者や転職経験者を対象としたデータでした。(ファルマスタッフ、薬キャリ職場ナビ)
なので、
3回目だからアウト。
とは考えなくてよさそうです。
ただし、
転職が増えるほど、
「なぜ辞めたのか」
「なぜ今回は長く働けるのか」
を聞かれる可能性は高くなる。
だから、
回数をごまかすのではなく、自分の転職歴に一本筋を通せるようにしておく。
こちらのほうが大切だと思います。
転職回数が気になるなら、「次の1社」を慎重に選ぶ
すでに何度か転職しているなら、
次は、
「受かるところ」
だけで選ばないほうがいいと思います。
処方箋枚数。
薬剤師人数。
一人薬剤師。
在宅。
残業。
休日。
異動。
応援勤務。
人員体制。
こういうところまで確認して、
自分が長く働けそうな職場か
を見る。
転職サービスを使う場合も、
「転職回数が多い自分でも応募できる求人をください」
だけではなく、
私の転職歴だと、採用側はどこを気にしそうですか?
この経歴なら、どういう求人が現実的ですか?
過去の離職理由と同じ問題が起きにくい職場を探したいです
くらい聞いていいと思います。
今回調べて分かったこと
- 「3回以上なら不利」という公的基準は確認できない
- 「薬剤師の平均転職回数2.4回」はファルマスタッフ登録者のデータ
- 「平均2.5回」という薬キャリの調査も転職経験者が対象
- 転職回数は年代によってかなり違う
- 40代では平均3.1回という登録者データもある
- 転職回数だけでなく、勤続期間・理由・キャリアの一貫性を見る必要がある
- 短期間の転職が続く場合は、採用側から定着性を懸念される可能性がある
ということで、
「3回になった。もう不利だ……」
と数字だけで落ち込む必要はなさそうです。
むしろ考えたいのは、
「4回目を防ぐために、3回目で何を確認するか」
なのだと思います。
主な参考資料
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
厚生労働省「令和3年度薬剤師確保のための調査・検討事業」
ファルマスタッフ「薬剤師の転職回数は多くても大丈夫?面接での伝え方も解説」
薬キャリ職場ナビ「薬剤師の転職動向アンケート」


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